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スポーツ・日常生活中のけが、痛み

スポーツや日常生活中に起こるけがには「外傷」と負担や力が繰り返しかかることによって起こる「障害」があります。

外傷(けが)

外傷(けが)は骨折、脱臼、打撲、捻挫、肉離れなどがあります。これらのけがが起きた時は、基本的な応急処置を行います。
それはRICEの処置です。近年では欧米を中心にRICEの処置(特にアイシング)はアスリートにとって本当に有効か?とする研究や報告がなされています。当院では受傷直後に来院可能な患者様ばかりではないため、けがの損傷を最小限に抑えるためと治癒が早まると判断した場合にのみRICEの処置を行っております。

R 安静(Rest)

けがをした後は、練習や試合を休むことです。体を動かさないことで(内)出血や損傷を最小限に抑えます。痛めた状態で無理をして練習したり試合に出場したりすると、かえって治癒が遅くなる原因にもなります。

I 冷却(Ice)

患部を氷や冷水などで冷やすことにより、患部の組織や血管が収縮する性質を活かし、出血を抑え、傷の圧着を早め、高度な腫脹を抑制します(受傷後速やかに冷やすことで、その後の回復が早まったり、軽く済むという研究があります)。

C 圧迫(Compression)

包帯やサポーター、テーピングなどで患部を圧迫し、出血による腫れを防ぎます。圧迫する適当なものが無ければ、ハンカチやタオルなどを利用しても構いません。

E 高挙(Elevation)

体を横たえ損傷部位を心臓よりも高くし、(内)出血による血流不全を抑えます。


※受傷した場所によって、上記の処置ができないこともありますが、完全でなくても可能なことを実施しましょう。


スポーツ/日常生活障害

むち打ち症とは

体の後ろから不意にぶつけられた時や自動車の運転中に衝突された時に、首の屈伸運動や回旋側屈運動を強制されて起こります。

症状

受傷後数週間は屈伸回旋側屈運動時に痛みが強く、首周囲の筋肉の緊張が強まり、また可動範囲が狭まります。症状が強い場合は、下のむち打ちレントゲン写真のように、頸椎の前湾(前側にカーブ)が失われて一本の柱の如くまっすぐになる事もあります。その後、徐々に可動範囲が広がって痛みも緩和していきます。但し、回復には患部の損傷程度、個人の生活、仕事の内容によって大きく変化します。

どんなタイプに多い?

普段から頸椎ヘルニアや神経などの疾患、首の痛み、肩こりなどの症状のある方は症状がひどくなる恐れがあります。また、衝撃が来ることが分かり身構えることができた時と不意に衝撃を受けた時では、患部の損傷も症状も不意の時の方がひどくなることが予測されます。

治療

痛みや不定愁訴(頭痛、めまいなど)が強いときは患部の貼り薬やアイシングで安静を保ちます。症状が緩和してきたら患部を温め、マッサージなどで少しずつ筋の緊張をほぐしていきます。


交通事故によるむち打ちレントゲン写真
交通事故によるむち打ちレントゲン写真

野球(テニス、ゴルフ、バレーボール)肩とは

球を投げたり打ったりを繰り返すことにより、肩関節の軟骨、筋、腱、靭帯が傷つき痛みが出現してきます。下のエコー画像は、ゴルフのやり過ぎで上腕二頭筋の腱が腫れて炎症を起こしています。画面右矢印より左の方が太くなっていることが確認できます。この様な症状になると、肘の屈伸や肩の上下運動が困難になります。

症状

上記の軟部組織が傷つくとキャッチボール、サーブやアタックなどの動作時に疼痛があり、速い球や強くボールを打つことが出来なくなります。

どんなタイプに多い?

体の成長過程にある小学生から高校生までに多くみられます。成人でも無理が続くと疼痛が出現します。

治療

超音波観察装置で患部の状態を検査します。筋や腱などに断裂、損傷、炎症や腫れがある場合は、投球動作などを中止します。損傷部が治癒するまでは、関節や筋腱の柔軟性を高め、練習にスムーズに復帰できるよう理学療法を継続します。


左上腕二頭筋長頭腱炎のエコー画像
左上腕二頭筋長頭腱炎のエコー画像

野球肘(内側型、外側型)とは

投球を繰り返すことにより、肘関節の軟骨、靭帯が傷つき痛みが出現してきます。

症状

肘の内側、外側の関節軟骨の裂離(剥離)や靭帯損傷(断裂)を起こすと痛みが出現し、投球が困難となります。下の中学生野球肘エコー画像は、右肘内側の軟骨が矢印方向に裂離している様子が確認できます。

どんなタイプに多い?

体の成長過程にある小学生から中校生までに多くみられます。速球派のピッチャー、遠投をするキャッチャーや外野手は要注意です。

治療

超音波観察装置で患部の状態を検査します。(成長)軟骨裂離や靭帯に断裂、損傷、炎症や腫れがある場合は、投球動作を中止します。早期の診断と加療が必要なことが多く、放置すると手術しなければ治癒に至らないこともあります。


肘内側エコー画像(左正常側)
肘内側エコー画像(左正常側)
内側エコー画像(右患側)
野球肘内側エコー画像(右患側)

手首の捻挫/骨折/痛みとは

転んで地面に手を突いた時や立ち上がる際に手をついて体重がかかった時に関節の軟骨、靭帯、腱、骨などを痛めます。
下は転倒して手をついて負傷した患者様の手関節捻挫エコー短軸画像です。赤丸で囲われた箇所は前腕伸筋腱で、赤線内にある黒い個所は微細出血や炎症による浮腫と推測されます。その右の長軸画像では、伸筋腱が右矢印と比較して左の方が腫れていることがわかります。

症状

手首を上下に曲げる、回す、手をついて加重する、握る、重いものを持つなどした時に痛みがあります。痛めた後は、腫れ、熱感、手首を動かせないなどの症状が出現します。

どんなタイプに多い?

子供から高齢者など幅広い年代にみられます。

治療

受傷後3,4日はRICEの処置をしっかりと行います。同時に症状に応じて理学療法を開始します。


左手関節捻挫エコー短軸画像
左手関節捻挫エコー短軸画像
左手関節捻挫長軸画像
左手関節捻挫長軸画像

ぎっくり腰/急性腰痛症とは

中腰から体を起こそうとした時や立ち上がる瞬間に、腰周辺にギクッ(ピクッ)などの衝撃と痛みが走り動けなくなります。

症状

腰椎の関節、軟骨、筋や筋膜を損傷します。腰を前後に曲げることや捻ることが困難となり、周囲の物につかまりやっと立ったり歩いたりできます。

どんなタイプに多い?

腰周囲の筋肉や関節が固い人ほど受傷しやすくなります。

治療

痛みがひどい間は患部を冷やし、横になったり座ったりして安静を保ちます。日常生活動作(着替えやトイレに行くなど)が、徐々に行えるようになってきたら理学療法を始めます。


膝の打撲/捻挫/骨折とは

転倒した時に地面に打ちつける、関節を外側内側に強く捻るなどして痛めます。

症状

関節に血や水(関節液)が溜まると左右を比較して見た目にも腫れが分かり、関節を触ると熱っぽく感じます。側副靭帯や半月板を痛めると、屈伸や膝を回す時に痛みが出現します。下は自転車で転倒して膝を地面に打ちつけ負傷したエコー画像です。初めは近隣のクリニックでレントゲン写真を撮ってもらいましたが、打撲と診断されました。痛みがひどく、超音波観察装置で患部の状態を検査したところ、膝蓋骨に骨折(矢印)と膝上部に血腫(赤囲み)が認められました。

どんなタイプに多い?

子供から高齢者まで幅広い年代にみられます。

治療

受傷後はRICEの処置をしっかりと行います。同時に症状に応じて理学療法を開始します。


左膝蓋骨骨折のエコー短軸画像
左膝蓋骨骨折のエコー短軸画像
左膝上部の血腫エコー長軸画像
左膝上部の血腫エコー長軸画像

オスグッドシュラッター病とは

大腿部前面の筋肉に強い牽引力が繰り返しかかることやジャンプ、ダッシュなどの急激な外力で膝下の軟骨部が裂離(剥離)します。下は中学生のエコー画像です。右膝下の正常側に比べて左膝下は赤矢印方向に軟骨が裂離し、腫れているのが分かります(青矢印)。

症状

症状がひどくなると膝下が盛り上がってきます。その部分を押すと痛みと熱感があります。階段の昇り降りやランニングが痛みの為に困難となります。また、膝を深く曲げることが出来なくなります。

どんなタイプに多い?

小学生高学年から高校生までのスポーツマン/ウーマンにみられます。この年代に多くみられるのは、体の成長過程で完全に骨の硬化が終了していない為、軟骨部が強い筋力で裂離してしまうのです。

治療

痛みが出現してしまう運動メニューは中止します。スポーツマン/ウーマンには運動を中止することは非常に辛いことですが、無理をして頑張っても治癒するまでにかえって時間がかかることになります。患部は腫れや熱感などの炎症症状が強く出ることが多く、アイシングや安静保持に努めます。同時に膝周囲の筋の緊張を和らげるような理学療法を行っていきます。


右膝下エコー画像(正常側)
右膝下エコー画像(正常側)
左膝下エコー画像(オスグット側)
左膝下エコー画像(オスグット側)

シンスプリントとは

ダッシュやジャンプを繰り返す競技(陸上短距離走、サッカー、バスケットボールなど)に多くみられます。すねの内側の骨や筋肉、筋膜に炎症が起こり、長期重症化すると疲労骨折を起こすこともあります。

症状

初期症状は運動を開始すると鈍痛がおこりますが、時間の経過とともに痛みが薄れます。その後、重症化すると運動開始とともに痛みが強まり、運動が継続できなくなります。

どんなタイプに多い?

中学生から成人のアスリートにみられます。特に陸上競技の短距離走や幅跳び、ハードル走などを掛け持ちしている選手、休みなく練習している長距離ランナーは要注意です。

治療

運動を一時休止して足を休めることが第一です。部活動など練習を休めない場合は運動量を減らし、ストレッチやアイシングなどを行います。同時に筋の柔軟性を高め患部の炎症を軽減するような理学療法を行っていきます。


ふくらはぎ肉離れとは

急激なダッシュやジャンプをした際に、ふくらはぎの筋肉や筋膜にバチッとした衝撃があり断裂します。下は60代男性でソフトボール中、ベースを回ったところでバチンとした衝撃と共に強い痛みで走ることが出来なくなりました。赤の囲みは内出血です。

症状

前足部に加重するとふくらはぎの筋が収縮し、痛みが強まります。また、断裂した個所を押すと陥凹を触知することがあります。

どんなタイプに多い?

ふくらはぎの筋肉が硬い人、ストレッチや準備運動をしないで運動を始める人は要注意です。

治療

受傷後は運動を中止し、RICEの処置を行います。筋肉や筋膜の断裂部両端が早く接続し修復されるようすみやかに理学療法を開始し、1か月前後は日常生活においても安静を保ちます。


右ふくらはぎ(腓腹筋内側頭)断裂のエコー画像
右ふくらはぎ(腓腹筋内側頭)断裂のエコー画像

足の捻挫/骨折とは

スポーツや日常生活中に足の関節を捻って受傷します。多くは足を内側に捻って(内反強制されて)外くるぶしや内くるぶし周辺を痛めます。下のエコー画像は、側溝を掃除中に誤って落ちて負傷しました。赤矢印方向に外くるぶしが剥離骨折を起こしています。腫れが僅かであったために患者様が捻挫と思い来院された症例です。

症状

関節周囲の膜、靭帯、靭帯が付着している骨などを痛めます。それらの損傷がひどいと内出血が起こり、腫れて加重歩行が困難となります。

どんなタイプに多い?

子供から高齢者まで幅広い年代にみられます。

治療

RICEの処置を行います。靭帯損傷や骨折の場合は治癒までの期間が長く、しっかりとした固定方法を選択します。


左足関節外果(外くるぶし)骨折のエコー画像
左足関節外果(外くるぶし)骨折のエコー画像

踵の痛み/踵骨骨端炎(シーバー病)とは

踵の内側、外側、後面や底面に加重痛が起こります。成長期の踵に繰り返しランニングやジャンプなどの衝撃が加わると踵に付着している腱やクッションの役目をしている脂肪、成長軟骨層に炎症が起き、痛みが出現します。

症状

踵からしっかりと加重する歩行やランニングが困難となります。足を引きずるような歩き方をするようになってきます。踵の周囲を指で押して痛む場合は、炎症が始まっていることが考えられます。

どんなタイプに多い?

小学生高学年から中学生、サラリーマンやウォーキングが日課の成人にみられます。

治療

運動を一時休止して足を休めることが第一です。部活動など練習を休めない場合は運動量を減らし、衝撃を和らげるサポーターの装着やアイシングなどを行います。同時に患部の炎症を軽減するような理学療法を行っていきます。


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